• HOME
  • 事例紹介
  • 観光防災デジタルマップで、観光客向けに地域の魅力とともに防災情報の提供を実現

観光防災デジタルマップで、観光客向けに地域の魅力とともに防災情報の提供を実現


白浜町 総務課企画政策係 係長 鎌谷 隆志 様(写真右)
白浜町 総務課企画政策係 主任 滝本 斉 様(写真左)


白浜町は和歌山県の南部に位置する人口約2万人の町です。日本三古湯の一つ「南紀白浜温泉」や白砂の海岸「白良浜」など観光資源に恵まれ、年間約300万人の観光客が訪れます。県内唯一の南紀白浜空港は羽田からは約1時間のアクセスということもあり、近年はIT企業の誘致活動やワーケーション推進にも取り組んでいます。

■ 観光客への防災情報提供に課題

一般に、台風・地震・津波などの自然災害発生時には、土地勘のない観光客は避難場所がわからず、初期避難に遅れが生じるという懸念があります。年間300万人が訪れる観光の名所でありながらも、南海トラフ巨大地震の際には津波警戒区域に位置する和歌山県白浜町。町役場総務課に勤める鎌谷氏と滝本氏は、観光客にも手軽に防災情報をお伝えしたいと感じてきたと言います。そのきっかけは観光地に暮らす住民の声からでした。

「住民から観光客も知ることができる防災情報を整備してほしいという声があったんです」(鎌谷氏)

多くの観光客が訪れる白浜町では、観光防災への関心は高く、これまでも取り組みを行っていましたが、観光客目線での情報提供が必要であると認識させられました。

■ 『かざす』『ひらく』だけで手軽に防災情報が得られる

白浜町はこの課題解決に、普段は観光用に使えるデジタルマップに防災観点を組み込んだ、観光防災デジタルマップ「しらはまこんぱす」を構築しました。

「しらはまこんぱす」は、スマートフォンをQRコードにかざすことで、白浜地域の地図が表示されます。専用のアプリケーションは必要ありません。普段はデジタル観光マップとして、温泉や絶景ポイント等の観光情報が表示されます。また、地図上で「防災」モードに切り替えると、現在地とともに避難所の位置やハザードマップが重ねて表示され、災害時、土地勘のない観光客でも迅速に避難所へ向かうことができます。

「東日本大震災や能登半島地震を通して、観光客の防災意識がますます高まっていると感じています。年間300万人の観光客の手元に紙の防災マップを届けるのは現実的ではないと考え、デジタルマップを検討しました」(鎌谷氏)

「手軽に防災情報を得られることを第1に、『かざす』『ひらく』だけで情報が得られるよう、利用者の使い勝手をいちばん意識しました」(滝本氏)

■ 歴史ある白浜の魅力を発信

関西の一大リゾート地として知られる白浜。その歴史は古く『日本書紀』にも記録があります。一方、昭和南海地震の津波被害から国内有数の観光地へと、復興の歴史をもつ地でもあります。

「復興の経験と教訓を未来へつなぐ羅針盤として『しらはまこんぱす』と名付けました」(滝本氏)

観光モードでは、歴史ある白浜の魅力を未来へとつなげるため、大正時代から残るレトロ写真をデジタル化し、当時の写真を通じて復興の歴史や知られざる白浜の文化を感じ取れるスポットを表示しています。

古い写真を集めるには、地元の人々の協力があったといいます。情報収集を手伝ったウフル社員によると「地元の人が集まるお店をハブにして、人づてに協力の輪が広まり多くの情報にたどり着くことができました。白浜の生き字引のような人にも出会え、コミュニケーションの輪が広まった」と話しました。

■ 利用者の反応に手ごたえ

サービスを本格スタートしたのが2023年10月末。年末から年始にかけ複数のメディアで紹介されたこともあり、少しずつ認知度があがってきているといいます。

実際に利用した県外からの来訪者からは、「過去の写真と今の様子を見比べられるのがおもしろい」といった意見や「ガイドなしの観光で、わざわざネットで調べたりしなくても手軽に観光情報を得られるのがよい」といった反応があったといいます。

また、防災モードを試してもらったところ、ハザードマップで前方も赤い津波エリアであることを知り、「観光客だったら後ろに海があるからそのまま海から逃げようと思って、まっすぐ(津波エリアに向かって)走ってしまう」と語り、「しらはまこんぱす」のわかりやすさを評価。観光地を探す感覚で防災情報も一緒にわかる手軽さと安心を感じてもらうことができ、手ごたえを感じたといいます。

■ ここにしかない情報の充実で地域の活性化を

白浜町は「しらはまこんぱす」のコンセプトを「つくる・つむぐ・つなげる」としており、住民による地域の魅力の掘り起こしや観光客を含めた情報共有によって地域を活性化させるプラットフォームとして活用したいと考えています。今後は地域住民やリピーターなどによるファンクラブ制度を検討し、利用者投稿機能を追加することで、多角的な視点からの情報を収集・活用したいと考えています。

「既存のサービスもいろいろと優秀なものがあるので、『しらはまこんぱす』でしか得られない情報をどんどん増やしていって、そうした情報を知ってもらうことでまた白浜にリピート訪問してもらえるようなサービスになれたら嬉しい」(滝本氏)

初めて白浜町を訪れる観光客に安心して滞在を楽しんでもらうことで、白浜町の来訪者の増加や地域活性化を狙います。

■ 「しらはまこんぱす」紹介動画

 

■ 白浜町観光防災デジタルマップ「しらはまこんぱす」

▶ https://shirahama.elcompath.com/

自治体概要

白浜町は和歌山県の南に位置する人口約2万人の町。温泉や石英砂のビーチで知られ、一年を通じて穏やかな気候と自然美に恵まれていることから、日本でも有数の観光地。IT企業の誘致やワーケーションを推進し、新たな雇用の創出と経済効果につなげる。「住んでよし、訪れてよし」のまちづくり、「世界に誇れる観光リゾート白浜」の実現を目指す。

「elcompath(エルコンパス)」について


ウフルが提供する情報ポータルマップ「elcompath」は、目的に応じて必要な情報だけを表示・投稿できるシンプルな仕様で、幅広い分野で受け入れられています。教育から防災まで分野を問わず活用できる汎用性が評価されており、今回のような非常時のハザードマップや避難所情報を示す防災分野、地域のローカル情報や魅力を示す観光分野のほか、MaaSなど様々な分野で活用されています。

また、ウフルが提供するサービス・データ連携基盤「CUCON(キューコン)」と一緒に利用すれば、インプットデータの収集・蓄積が容易になり、複数のソースからなるデータのスムーズな利活用を実現できます。CUCONは、スマートシティリファレンスアーキテクチャにて重視されている5つの基本コンセプトをカバーし、都市OSとしてご利用いただけます。

CONTACT

ご依頼・ご相談など、お問い合せはこちら